『ユーキー、ユーキーっ』
「……返事はあったか?」
『うーん、ないですねえ。まったく、つくづく重度の方向オンチは困りますね』
「まあ、辺り一帯が同じ景色なら、方向を見失うのも仕方ない……が、あいつは街中でも北がわからないからな」
『もうあと3ヶ月ちょっとで18歳になるっていうのに、本当に困ったもんですね。そういえば坊ちゃん、坊ちゃんって』
「しつこい奴だな。あいつは砂糖菓子だと言ってるだろう」
『そんなこと言ってないじゃないですかー。もう、坊ちゃんったら意識しないでくださいよ★ こっちが照れちゃうでしょ(〃ω〃)』
「なんの話だ」
『冗談ですよ、冗談。僕だって、坊ちゃんにそんな気がないことはわかってるんです。ただ、興味はあったんですよね。でもユーキの前では言い出せないし』
「で、ユーキが行方不明の今が絶好の機会だったというわけか」
『そういうことです。ユーキは、坊ちゃんの近くにいれればそれでいい、って思ってるみたいですし。坊ちゃんだって、なんだかんだ言ってても、ユーキが近くにいないと退屈してるじゃないですか』
「まあ、おちょくるのにはちょうどいい奴だからな」
『坊ちゃん、僕じゃ不満なわけですか』
「Mだったのか、お前」
『ま、僕のことは次の機会に議論することにして、坊ちゃんはユーキに対して案外まんざらでもないんですよ。いないとなんか物寂しい感じだし、どうでもいいなら放置しとけばいいし。どうですか、このままユーキと結婚するのは』
「け、結婚!? なんなんだ、なにを言ってるんだ。誰が誰と結婚するんだ?」
『坊ちゃんとユーキですけど』
「僕と……ユーキが? ないな、絶対にありえない……!」
『なにがありえないですか、もう。明らかにリアルに想像した人の反応じゃないですか。どうです、しっくり来ました?』
「う、うるさい。3分以内にユーキを見つけろ! さもないと、お前をここに捨てていくぞ!」
『3分!? カップ麺!? ちょっとちょっと、今の今まで探して見つかってないっていうのに、これから3分以内に見つけられるわけないじゃないですか。そんなお手軽な時間で行方不明者が発見できたら、今まで悲しい報道なんてひとつ足りともなかったはずなんですよ』
「黙れ。見つけろと言ったら見つけろ!」
『……はぁ、はい。はぁ…早く出てきてよ、ユーキ……」
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