『ねえ、坊ちゃん』
「ん?」
『正直な話、坊ちゃんはユーキのことをどう思ってるんですか?』
「一体なんの話だ。またなにか吹き込まれたのか」
『いえ、僕の個人的且つ素朴で素直な疑問です。坊ちゃんはユーキをどう思ってるんですか?』
「どうって、別に……」
『別に? そんな曖昧な単語で片付けちゃっていいんですか? ユーキは悲しみますよ。坊ちゃんに「別に」なんて思われてたなんて知れたら』
「絶対になにかあったな。いつだか知らないが、どうやらシャルとユーキがタッグを組んでいた時間があったらしい。フッ、まさかこの僕がはみってしまうとは」
『はみ? あぁ、仲間外れって意味ですね。坊ちゃんがそんな乱れた言葉を使うなんて』
「で、お前はなんて言われたんだ。ユーキのくだらない妄想に付き合ってると埒があかないぞ。夢見る乙女ほど面倒なものはないからな」
『ほかに夢見る乙女を知ってるみたいですね。……浮気ですか、趣味悪いですよ』
「お喋りが過ぎるぞ。いつ僕がどこの馬の骨とも知れない女と浮気なんか……、おい。お前、僕になにを言わせたいんだ」
『別にいー。なんか今日の坊ちゃん、いつにも増して冷静でつまんないなー、と思ってたんです。久しぶりなのにさ、このシリーズ』
「とっても面白い冗談をまだまだ聞いていたいところだが、そろそろ現実に帰還する頃合いだ。お前に余計なことを吹き込んだと思われるユーキはどこに行ったんだろうな」
『噂をすればなんとやらって言うでしょ。だから、こうして僕と坊ちゃんがユーキを話題にしてお喋りしてれば、ひょこっと本人が現れてくれるんじゃないかなと思って。どうですか、そのへんにちょろついてないですか』
「ああ、ちょろついてくれればよかったんだがな。生憎ここは砂漠だから、噂しなくても人影があれば見失うはずがない」
『まあまあ、暑いからってそんなにイライラしないでくださいよ。で、ユーキのことはどうなんですか? 好きですか? 嫌いですか? もちろん好きですよね? だーいすきですよね
』
「好きだと? 僕が? ユーキを? 片腹痛いな。あいつはアレだ。別にいなくてもいいんだ。砂糖菓子だ」
『ちょっとはこっちの期待に沿った反応してくださいよー。このシーンでは、坊ちゃんが「好き」という単語に妙に反応して照れて断固否定するっていうのが筋じゃないですか? もっと萌え要素を含んでください』
「なんの話だ。僕は暑くてイライラしてるんだ。普段だったらお前をどこかそのあたりに放置して行くところだぞ。そんなことよりユーキを探せ」
『探すったって、こんな砂漠でどこをどう探すんですか』
「千年来を生きてきた知力を駆使して考えろ」
『はあ、言ってくれるもんですよ。僕は、別に千年来意識があり続けたわけじゃないんです。できないことはできないし、わかんないことはわかんないままです』
「進歩がないな……」
『傷つくんですよ、僕』
「傷ついても、くだらないことを言う口は閉じない」
『いや、僕は切実に疑問なんですよー。今後、坊ちゃんとユーキが一緒にい続けた場合、必然的になんというか』
「もういい。早くユーキを見つけろ」
『見つけろって……僕より坊ちゃんのほうが視界広いですよ』
「見つけろ!」
『あぁ……はい。はいはい。はぁ……もう……』
PR