茜色の空の麓 鬼ヶ峠に錆びた刀
塗り込められた想いは確か
歪んだ愛でも語れる正義
真実の鬼は何処に潜む

光輝く世界であるなら
血塗られた過去など不必要な現実
万人の罪を洗いながら
装飾された過去を伝えよ

斬り裂かれた四肢など記憶の果て
身近の少年の振り下ろす悪
闇射す場でのみ形成されし仮面を
光射す許で剥がせ

失った魂宿る想い
鋭利を纏う在るべき魂
拙い手では退治できない
刀を持てない悲哀の桃太郎

生きるのならば夢は最果て
立ち向かうべきはその場所に
美しい顔をして闇を飼う
真実の鬼は其処にいる

「失った魂よ愛すべき人よ
貴方は空の上で僕を見ていて下さい
いつかその日が来たら鬼を倒し
峠を登って君に手を伸ばします」

牙を持たぬ悪意 涙を伴わぬ哀しみ
人形劇の如く創られた展開
優しい笑顔の狂気 般若の面
打ち砕くべき仮面

遠く離れた孤島に鬼などなし
街行く人々の瞳に個々の飼う鬼あり
残された者せめて喰らわれぬよう
拙いこの手で刀を取ろう

鬼ヶ峠で蔓延る生者
また蔓延るもの死の使い
見えぬ心の闇は鬼の生きた証
この世界で純に生きたのは貴方で何人目でしょう

茜色の空の麓 鬼ヶ峠に錆びた刀
塗り込められた想いは確か
歪んだ愛でも語れる正義
真実の鬼は何処に潜む

茜色の空の麓 鬼ヶ峠に浮遊する魂
想いは確かに真っ直ぐなのに
伸びる方向は鬼門への入り口
真実の鬼は此処に潜む

光輝く世であるなら
人が犯した罪など皆無
語り継ぐ度に美しく飾り
世界の姿を伝えればいい

鬼ヶ峠に死した勇敢
人の心に棲む鬼を見て
己は喰われることなかれと
桃太郎は刀を掲げて

「失った魂よ大切な貴方よ
己の中の鬼に支配される前に
僕は辿り着きました
鬼ヶ峠を登りきり
今貴方に手を伸ばします

僕は今貴方の許へ…」

茜色の空の麓 鬼ヶ峠に錆びた刀
年端行かない桃太郎は
失ったはずの大切な人の許へ行く
仲間を持たない孤独の少年

真実の鬼は何処にいるのだろう
微笑みの裏に歪んだ正義を隠す
過ちを認識せず日々を生きてゆく
万人認める鬼の居場所を
その胸に訊いてみるがいい